あらしの島で ブライアン・フロッカ文 シドニー・スミス絵 原田勝訳 偕成社

 シドニー・スミスの絵が、すばらしい。いまにも嵐がやってこようとするときの、空の色や風の匂い、ざわざわする空気感が、みごとに描き出されている。嵐が来るときの、非日常感。怖いけど、ワクワクするような、体中がざわめくような、あの感じ。いつもと違う顔をしている場所をめぐってみたくなるのは、誰でも経験のある感情だ。 

 

「もう、気がすんだ? それとも まだ?

 手をひっぱって、ひっぱられて、ぼくらはさきへすすむ」

 

海も空も暗くなって、それでいて雲の切れ間から光が射して。複雑な表情を見せる瞬間が、ページをめくるたびに押し寄せ、ドキドキする。見開きいっぱいに展開するところと、横に長く切り取った絵を重ねていくところと、変化とリズムがあるのもいい。嵐が吹き荒れるギリギリのところを駆け抜けながら、五感が研ぎ澄まされていく。迫力に押し流されて、細部の美しさに引き込まれる。いいなあ、と、溜息をついて、もう一度、はじめから読む。何度もめくりたくなる。何度も体感したくなる。この世界は、こんなに美しくて、不思議に満ちているということを。

こうして、本棚にシドニー・スミスコレクションが増えていく。