太田女子高等学校新聞部発行の7月18日号「学友報知」にインタビューを載せて頂きました。

太田女子高等学校新聞部発行の7月18日号「学友報知」にインタビューを載せて頂きました。 拙著である『戦争と児童文学』(みすず書房)を読んでくださったのがきっかけです。

インタビューは、<あれから〇〇年―戦争や震災を経ての「いま」を探る>という企画の一つです。 「語り部となる児童文学―終戦から80年―」として、「戦争を風化させないために私たちは何ができるのだろうか」という新聞部の方たちの問いかけに、私が「文学の力」、とりわけ児童文学が戦争をどのように伝えようとしているのか、というお話をさせてもらったのです。

文学は、すべての壁を越えてゆくもの。心の壁、国境の壁、時間の壁。翻訳されて言語の壁も飛び越え、見も知らぬ人の心のなかにたどり着くことが出来ます。 あなたも、私も、かけがえのない、ひとりの人間であるということを教えてくれる。特に、児童文学は、その越えてゆく力が強い―そんな私の話を、新聞部の皆さんは、とても真摯に聞いてくださって、素敵な記事にしてくださいました。

 他にも、「次世代に語り継ぐ平和への思い―太田空襲から80年―」という記事には、地元の「太田市遺族会 戦争を語り継ぐ会」の代表の方への直接インタビュー、「―阪神・淡路大震災から30年―」として、阪神淡路大震災がきっかけになって変わったこと、防災グッズなどの紹介などの記事と、非常に充実した内容で、読み応えがあります。

戦争を、どう語り継ぐか。この難しい命題に、若い人たちが取り組んでくださったことが何よりうれしい。自分が高校生の頃には、ほんとに何にも考えず、毎日バンドの練習をしたり、マンガを読みふけったり、遊ぶことしか考えてなかったなと、頭が下がる思いです。また、それだけ、若い人たちにも「戦争」が自分事として近くに感じられてしまっているのかもしれないとも思います。戦後80年目の夏。この戦後が「戦前」にならないようにと、Zoomで、新聞部の皆さんと楽しくお話しながら思ったことでした。

 

最新刊「日本児童文学 7・8月号」特集「記憶を伝えるという文化」

 

自分のインタビューを載せてもらったから、というのではないが、今月号の「日本児童文学」(日本児童文学者協会)が、読み応えがあって面白い。 

まず、「雨あがりに虹が立つように」という井上良子さんの詩が、心に刺さる。井上さんは、この詩に本当のことだけ書いたという。家族や親族の人々が原爆投下によって舐めた辛酸を、熱のある言葉で連ねてあるのだが、連ねた記憶に詩人の魂が注がれており、力強くも琴線に触れるメッセージとなっている。

朽木祥さんの「『負の記憶』を伝えるということ」、中澤晶子さんの「八十年目のひろしまで」というエッセイには、原爆の物語をずっと書いてこられた方の誠実さと責任感が伺えて背筋が伸びる。西山利佳さんの「伝える語り・伝わる語りーー朽木祥作品を通して『伝える』を考える」と相川美恵子さんの「中澤晶子作『ワタシゴトー14歳のひろしま』の越え方を『ワタシゴトー14歳のひろしま』から学ぶーー「原爆を発見する物語」のこれから」という評論にも、気づかされることが多かった。そして、指田和さんの「日本原水爆被害者団体協議会 田中煕巳さんとの対話」は、指田さんならではの、貴重な記録だと思う。田中さんの温かいお人柄とともに、憲法九条についての厳しい言葉や、核兵器廃絶に今もたゆまぬ努力をされている姿勢など、学ぶことがたくさんあった。

「繁内理恵さんに「戦争」と「児童文学」について聞く」という、拙著『戦争と児童文学』(みすず書房)についてのインタビューは、9ページにわたって掲載していただいた。何時間も調子にのってしゃべりまくってしまったことを、的確にまとめて頂いて感謝しかない。本屋さんからの取り寄せもできるし、全国の図書館で読めると思うので、良ければ手にとって頂けると嬉しい。 

子どもと絵本に親しむ 【いいお産の日】

今日(11月4日)は、関西ろうさい病院で、【いいお産の日】というイベントがありました。これは、かんさい労務病院のもとでいいお産をし、笑顔のあふれた家庭・社会を一緒に作るという目的で、毎年病院が行っている行事だそうです。そこで『子どもと絵本に親しむ』というテーマで、kikoさんがメインのお話を、私がサブでお手伝いを、という形で参加させて頂きました。

ブックスタート(赤ちゃんに初めての絵本をプレゼントする活動です。今、多くの自治体で行われています)のお仕事をしていてよく思うのが、「絵本」について、親ごさんたちが構える気持ちをもってらっしゃること。「いつから読めばいいのか」「どういう風に読めばいいのか」「どんな絵本がいいのか」漠然と、ルールを求めてらっしゃるように思えることがあります。でも、絵本を読むのにルールはいらない。いつから、どんな絵本を読んでもいいし、どんな風に読んであげてもいい。ルールのない自由さを楽しむのが絵本のいいところだと思っています。一番大切なのは楽しむこと。子どもと一緒に笑顔になれること。子ども時代にしか経験できない、かけがえのない親子の時間を過ごすことが、絵本のある一番の喜びだと思うのです。今日のkikoさんのお話も、実際に絵本を紹介しながら、絵本の楽しさ、絵本と共に過ごす子育ての楽しさについてのあれこれを紹介するという形で進みました。

そこで何組もの親子の皆さんや看護師の皆さんとお話をして思ったのが、「絵本の力」です。会場には、たくさんの本を持っていきました。(リストを固定バーの『おいしい本の特集』の頁に貼っておきます)そこでお話をしながら、または自由に絵本を見て頂いたのですが、皆さん絵本を見ると、とてもいい顔になるんです。「この本覚えてる!」「よくおふくろに読んでもらいました」というお父さん。お父さんたちに人気だったのが『どろんこハリー』です。

このハリーのやんちゃぶりが、お父さんたちの少年心をくすぐるのかも(笑)お父さんたちが、むっちゃ笑顔でした。この笑顔、っていうのがいいんですよねえ。そのお父さんたちの「まだあるんですね、この絵本」という言葉を聞いてはっとしました。

私たちは、図書館で働いていて、いつも身近に絵本があって、どれがスタンダードで長らく愛されている絵本なのかを一通り知っています。でも、大抵の若い親ごさんたちは、絵本に触れる機会が、子ども時代以降、ぷっつりないのです。だから『ぐりとぐら』という絵本を、中川李枝子さんと山脇百合子さんというゴールデンコンビが書いてらっしゃるということも知らない。「外国の絵本なんだと思ってました」という言葉に、こちらのほうが、そうか、それも当たり前なことだよなあと認識を新たにさせて貰いました。スタンダードでなくても、名作でなくてもいいんですけど、「この絵本素敵ですよ」「面白いですよ」といろんな形で紹介することって、やっぱり必要だなと思ったんです。

絵本には力があります。読み手を笑顔にする力。頭の中で、いっぱい想像という翼を羽ばたかせるイメージを生む力。「国語が出来るようになりますか?」ということを期待される親ごさんもいらっしゃるけど、それはまあ「そんなことがあったらいいな」くらいで置いといて(笑)何より、絵本を通じて、いっぱい親子でお話して欲しい。「ちょっと怖い内容の絵本を読んでも大丈夫なんですか」とおっしゃるお母さんもいらしたけれど、お父さんやお母さんのお膝や抱っこの中で、怖い世界を覗くのも、一つの経験だと思います。絵本の、物語のいいところは、ちゃんと帰ってこれるところ。最近流行りの『地獄絵本』なんかは、私はどうなんだろうと思いますが(だって、あれは絵本じゃないですからね。元々の目的が、信仰しないと地獄におちるよ、という脅迫のようなものですから。絵も美しくない)物語の世界を堪能して、また温かいお膝に戻ってくるというのは、これも大きな喜びです。

一人のお父さんが『おおきなかぶ』を見て、しみじみと「これ、おふくろがよく読んでくれたんですよ。うんとこしょ、どっこいしょ、ってすごく元気に読んでくれた声も思いだしました」とおっしゃってました。そのお母さんは、今、ご病気で声がうまく出せなくなってらしゃるそうで・・。でも、絵本を見たときに、元気な時のお母さんを、絵本を読んで、いっぱい抱きしめてくれたその愛情も一緒に思いだせるなんて、なんて幸せなことなんだろう。胸がいっぱいになりました。改めて、絵本っていいなあと思わせて頂けたこと。たくさんの気づきを頂けたこと。貴重な機会を頂きました。看護師長さんはじめ、お世話になった方々に、心から感謝の一日でした。また、こんなふうに、絵本のお話をいろんな方とできる機会があったらと思います。

by ERI