12種類の氷 エレン・ブライアン・オベッド文 バーバラ・マクリントック絵 福本友美子訳 ほるぷ出版

もうすぐソチオリンピックがありますね。「がんばれ!日本!」みたいな応援の仕方はあんまり好きじゃないのですが、フィギュアスケート好きとしては、今度の五輪は見逃せないでしょう。テレビで放映される大会は全部見ているので、外国の選手にも好きな方がたくさんいるんですが、一番好きなのは、やっぱり大ちゃんこと高橋大輔選手。彼の最後のオリンピックですから。年末の代表選考はやきもきしました。彼はアスリートで、演技を数値化される競技でぎりぎりの闘いをしているのですが、生まれながらのダンサーで身体が物語を語るんですよね。そこにいつもドキドキしてしまう。その分、失敗も多くてドキドキしますけど(笑)高橋大輔選手と浅田真央選手のスケーティングは上手く言えないんですけど、他の選手と全く違うものを感じます。他の選手はスケートを愛しているんですが、彼らはスケートに愛されてるなあと思うんですよね。氷が彼らに滑ってもらいたがってる。彼らが、氷の上で流れるように滑っているだけで、うっとりする。それを見るのが至福です。二人がヘンなナショナリズムに巻き込まれないで、オリンピックで楽しく、のびのびと滑ってくれたらいいなと思うんですけど。ほんとに応援しているファンは、メダルの色がどうとか言わないんですよね、きっと。オリンピックのときだけやたらに愛国主義になる人たちに振り回されませんように。

前置きが長くなりましたが、これは、そんな氷を愛してやまない小さなスケーターたちの本です。冬を迎えて、初氷が出来ると子どもたちは期待に胸がいっぱいになるのです。それは、スケートができるから!この本には、そんなスケートの楽しみがいっぱいに詰まっています。小川の上をずっとたどっていくスケート。分厚い氷が張った池の上を走るスケート。そして、自分の家の農園にスケートリンクを作って(凄い!)そこで近所の友達とフィギュアスケートやアイスホッケーをする楽しみ。日常の中にこんなにスケートがある喜びが溢れているなんて、なんて幸せなんだろうと思います。空と、風と、森と、溶け合うように滑る楽しさ。私はスケートは屋内のリンクでしかしたことがなくて、しかも下手っぴであまりスピードを出せませんでしたが、スキーは結構経験があります。冷たい風の中で、きらきら光る白い世界を山の景色を見ながら滑り降りていく楽しさ。耳元で風がうなりをあげるほどスピードを出す感覚。もうこの年齢でそんなことをしたら危ないだろう私には、もう体感できませんが、この本の中で思い出せて嬉しくてぞくそくしました。

銀のスピードが出るまですべると、肺と足が、雲と太陽が、風と寒さが、みんないっしょにきょうそうしているみたいになる。

うん、そうそう!楽しいんだよねえ。自分の身体で掴む、確かな弾む喜びが、この本には溢れています。子どもが身体を思い切り使って喜びを感じる幸せの大切さ。それをさりげなく支える大人の心遣い。それがとても美しい絵と文章で綴られています。

児童文学には、スケートがよく登場します。フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』の川をスケートで渡っていくシーンの美しさは格別ですし、『ピートのスケートレース』(ルイーズ・ボーデン 福音館書店)の少年の冒険も忘れられません。メアリー・メイプス ドッジの『銀のスケート』(岩波少年文庫)や 『 楽しいスケート遠足』(ヒルダ・ファン・ストックム 福音館書店)も好きだなあ。こんなにフィギュアスケートが好きなのは日本人だけかも、といつも満杯のテレビ中継を見てて思うのですが、スケートを長く愛してきた国のことを、こんな物語からたどってみるのも、また楽しいと思います。

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