『へそまがりの魔女』 安東みきえ文 牧野千穂絵 アリス館

牧野千穂さんの絵と、安東みきえさんのテキストがお互いの良さを引き立て合って、おしゃれで、小さな宝箱のような一冊になっている。牧野さんの赤の使い方が、なんとも心憎くて、洗練されている。絵を眺めているだけで一日過ごせる。魔女が王子に呪いをかける、というおとぎ話の定型をうまく反転させて、どこか不穏な、それでいて心温まるファンタジーに仕上げている。一抹の不穏さと温かさが同居しているのがとても素敵だ

へそまがりの、年老いた魔女のところに、ある日少女が迷い込んでくる。身寄りのない少女は、魔女の家で骨身を惜しまず働くのだが、魔女はいつもそっけない。しかし、実は魔女は、誰かを愛して裏切られることに傷ついてしまっただけで、実は、帰りが遅くなった娘を心配して何も手につかなくなってしまうほど娘を愛しているのだ。大切なものができてしまうと、失うのが怖くなる。その怖さはよくわかる。

いいかい。良いことの裏には悪いこともくっついてくる。ふたつはうらおもてにできているんだ。良いことばかりを手にするわけにはいかないんだよ。」

この言葉を心に刻んでおくと、息をするのが少し楽になるかもしれない。祈りと呪いも裏表。呪いを祝福に変えるラストが嬉しい。

 

 

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