最新刊「日本児童文学 7・8月号」特集「記憶を伝えるという文化」

 

自分のインタビューを載せてもらったから、というのではないが、今月号の「日本児童文学」(日本児童文学者協会)が、読み応えがあって面白い。 

まず、「雨あがりに虹が立つように」という井上良子さんの詩が、心に刺さる。井上さんは、この詩に本当のことだけ書いたという。家族や親族の人々が原爆投下によって舐めた辛酸を、熱のある言葉で連ねてあるのだが、連ねた記憶に詩人の魂が注がれており、力強くも琴線に触れるメッセージとなっている。

朽木祥さんの「『負の記憶』を伝えるということ」、中澤晶子さんの「八十年目のひろしまで」というエッセイには、原爆の物語をずっと書いてこられた方の誠実さと責任感が伺えて背筋が伸びる。西山利佳さんの「伝える語り・伝わる語りーー朽木祥作品を通して『伝える』を考える」と相川美恵子さんの「中澤晶子作『ワタシゴトー14歳のひろしま』の越え方を『ワタシゴトー14歳のひろしま』から学ぶーー「原爆を発見する物語」のこれから」という評論にも、気づかされることが多かった。そして、指田和さんの「日本原水爆被害者団体協議会 田中煕巳さんとの対話」は、指田さんならではの、貴重な記録だと思う。田中さんの温かいお人柄とともに、憲法九条についての厳しい言葉や、核兵器廃絶に今もたゆまぬ努力をされている姿勢など、学ぶことがたくさんあった。

「繁内理恵さんに「戦争」と「児童文学」について聞く」という、拙著『戦争と児童文学』(みすず書房)についてのインタビューは、9ページにわたって掲載していただいた。何時間も調子にのってしゃべりまくってしまったことを、的確にまとめて頂いて感謝しかない。本屋さんからの取り寄せもできるし、全国の図書館で読めると思うので、良ければ手にとって頂けると嬉しい。 

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