ぼくって、ステキ? ファン・インチャン文 イ・ミョンエ絵 おおたけきよみ訳 光村教育図書

授業中に、ふと隣の席の女の子が、ぼくを見て「すてき・・・・・・」と言った。

もしかして、ぼくのことを「すてき」って言ったのかな?と思ってから、いがぐり坊主の「ぼく」の日常がきらきらする。瞳だってきらきらしてしまうし、ご飯だっておいしいし、なんだかそのことばっかり考えてしまう。「すてき」ってどういうことなんだろう、ってずっと考える。でも、次の日学校にいった「ぼく」は、彼女が何を見て「すてき」と言ったのかわかってしまう。

この、勘違いしてしまったときの恥ずかしさというか、やっちまった感とか、いい気になっていた自分が恥ずかしい気持ちとか、わかりすぎるくらいにわかる。少年よ、落ち込むことはないんだよ、誰だって一度や二度、いや、何度もその穴に落っこちるものなのだ。いい歳をした大人になってもそうだし、大人だって、その穴に落っこちたときは、なかなか這い上がれないものなんだよ。うん。

それでもこの絵本を読んだあと、優しい気持ちになれるのは、「すてき」という言葉の魔法が、ポジティブに描かれているからだろう。この本のなかで「すてき」と言われているのは、一面にはなびらが散り頻る満開の桜の木。自分の思い込みが恥ずかしくて悲しくなってしまった「ぼく」の心は、「すてき」な桜になぐさめられる。ああ、「すてき」ってこういうことなんだなあと心に刻むのだ。花の命があふれて、皆を幸せにしてしまう。その不思議。すてきなものを見て幸せを感じたり、慰められる人の心のあり方が、愛しいなと思う。さくらのピンクにふんわりと包み込まれるような、優しい絵本だ。

 

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