大阪の大丸心斎橋劇場に、朗読劇『銀河鉄道の夜』を見に行ってきました。見た、というよりは体感した、という方がいいかもしれない。映像と詩、朗読と音楽から成る、とても不思議な空間でした。テキストから磁場が生まれるんですよ。それがとっても刺激的で、まだ頭の中でイメージがぐるぐる駆け巡っています。出演は、古川日出男氏、柴田元幸氏、管啓次郎氏、という、御三方。そこにミュージシャンとして小島ケイタニーラブ氏。この組み合わせだけでも、文学オタクとしては興奮してしまいました。
この朗読劇の芯にあるのは、3.11の大震災です。まだあれから2年と少ししか経ってないんですよね・・・。でも、もう皆いろんなことを忘れかけてる。核を扱う実験現場でさえも、危機意識が薄れて弛緩してることに、びっくりします。株価が上昇したら、もうそれだけでええわ的なこの浮かれ具合に、どうも私は馴染めない。そんなに簡単に忘れてええのん?と言う声は、ますます大きくなる経済プロパガンダに消えてしまいそうです。それが怖いし、不安な気持ちがいつでもあるんです。大阪に住む私でさえそうなのだから、実際に被災された方々は、どんな想いをされていることだろうと思う。どんどん取り残されてしまうような気持ちをされているのではと、いろんなニュースを見るたびに思うのです。だから、今日のように、文学の第一線におられる方々が掲げる、あの日を照らし続けようとする灯りに、心がほっとしました。痛みと悲しみを共に、それぞれの風景の中に共有していこうとすること。管氏の自作の詩に佇んでいた少女の瞳に映っていた光と波の記憶。柴田氏が朗読された小説の、誰もが忘れてしまった妹の記憶。強烈に胸に焼き付いています。古川日出男氏の脚本による『銀河鉄道の夜』も、とても熱かった。宮沢賢治が走らせた銀河鉄道に、『今』が繋がって―遠い果てまで一緒に行って帰ってきたような気がしました。出演者の方々の祈りと強い想いが、確かな磁場を作って共鳴していました。それを生で体験できて、とても幸せな夜でした。
古川日出男さんが、あんなに熱い方だったとは。しかも、はにかんだ笑顔がとってもキュートで、魅力的だった。柴田元幸さんが想像していたよりとても若々しくて少年のようなのにも驚いた。朗読されていた小説があまりに印象深かったのでお尋ねしたら、さらさらと原典を書いてくださった。この手帖は家宝じゃ(笑)管氏の声が、まるで声優さんのように深くて魅力的なのにも驚いてしまった。少しだけれど、お話も出来て、文学オタクにはこたえられない夜でした。また、関西で公演してくださらないかなあ。絶対行きます。
by ERI