カヤックとフルムーンミーティングの旅 

三日間ほど酷暑の大阪を抜け出して、一足早く高原の秋を感じてきました。友人は東京から。私は大阪から。長野で落ち合っての旅です。大学時代はあまり・・というか、全くアクティブではなかった私たちでしたが、今回の旅はカヤックを体験し、満月の夜の湿原を歩くというやる気満々な企画。そんなやる気が幸運の女神を引き寄せたのかとても素晴らしい旅になりました。まず、生まれて初めてレンタカーなるものを借りて運転したのが、我ながらすごい!(自慢するようなことやないですけど。しかも、このレンタカーがあまりにも走らなくて笑えましたけど)

梨木香歩さんの『水辺にて―on the water/off the water 』を読んでから、ずっとカヤックに憧れてました。あちこちを旅しながら、ここぞという場所を見つけてカヤックを組み立てて浮かべ、水の中に滑りこむ。まさに「自由」の体現ですよね。そして、自由を体現するということは、自分という存在と向き合うことでもあります。『たのしい川べ』『ハヤ号セイ川をいく』『ツバメ号とアマゾン号』『風の靴』等々、川辺の遊びは児童文学と切っても切れない関係なのも、そんなところに一因があるのかも。・・・と、段々話はそれていきますが(笑)そんな心にずっともっていた憧れが、友人の「カヤック乗ってみたくない?」という言葉で炸裂した次第です。憧れは遠く遠く流氷の海をゆく星野道夫さんにまで炸裂しましたが、ま、憧れは置いといて(笑)千里の道も一歩から、ということで白樺湖でのカヤック初心者体験コースに参加してきました。

梨木さんにとってはカヤックは孤独の記号、変動する境界。私たちの理想も、そこにあるんですが(大きく出すぎやろ!)最初は小学生に混じって、カルガモのひなのように、インストラクターのお兄さんについていくのが精一杯でありました。カヤックって、乗ってみると予想以上に水に近いんです。最初は恐怖感がありましたね。こんなに怖いものに、たった一人で乗る梨木さん。凄い・・・。改めて尊敬。でも、四苦八苦しているうちに、ふとカヤックが身体に馴染む瞬間があり、自分の身体感覚で乗ればいいのだと気が付きました。車みたいなもんですね。そこからはもう、とっても楽しくてずーっと水の上に浮かんでいてもいいくらいでした。自分の手で方向もスピードも全てが決められる楽しさ。浮かんでいると風に流されていくのもいい。アメンボのように、風景の中に溶け込んでしまうような気がしました。

そのあと、車山にリフト一本分をゆっくり上りながら散策。私たちはほんとに寄り道が多い。花を見つけてじーっと見つめて写真。登りながら刻々と変わっていく風景にいちいち立ち止まってあれこれ言いながら写真。蝶を見つけて(以下同文)鳥を見つけて(以下同文)。友人とは、何かを見て心に刻むタイミングが一緒なので、そこがとっても嬉しいんですよね。人のペースにいらいらすることもなく、急かされるような気がして悲しくなることもない。結果、売店のお姉さんが「30分くらいで」と言った道のりを、2時間かけて歩くことに。山頂に着いたら、リフトでやってきたハイヒールのお姉さまや、可愛いミニスカートの女子たちがいっぱいでした(笑)何より車山は涼しかった!


この日のミッションはまだまだ続きます。車で移動して今度は八島ヶ原湿原のフルムーンミーティングに向かいます。その前に宿泊予定の「鷲ヶ峰ひゅって」に到着したのですが・・。このお宿が、ほんとに素敵なところで、もうほんとに生きてて良かった、という気持ちになりました。大袈裟ですかねえ。でも、友人とずっと一緒に旅行したくて、でもお互い色んな事情があって実現できない年月が続いて。ほんの二泊三日ほどのささやかな旅でも、私たちにとっては大きな一歩だったのです。今、共にいて、この時間を過ごしている。そのことが奇跡のように思えて、夕暮れのお庭で雲の切れ間から降り注ぐ光の梯子を見ながらおもわずうるうるしてしまいました。

 これが宿の入り口。この門の両脇に、可愛い小人さんがいて出迎えてくれます。

 

この宿のすぐ横の林にはどうやら鶯が住みついているようで、滞在している間中、とても素敵な歌声を聴かせてくれました。ほんと、一週間くらい―いや、ひと夏ずっとここにいて、本を読んで散歩できたらこんなに幸せなことはないでしょうね。お料理も本格フレンチで最高でした。たくさん置いてある本も、好きな本ばかりで胸がきゅっとしましたし。あちこちに置いてある小さなものの全てに愛情がこもっている。そんなお宿でした。今思い出しても、温かい気持ちになります。

長くなりました。ひとまずこれでアップして、フルムーンミーティングのお話は明日。