今日(11月3日)大阪府立中央図書館で、来日されているデイヴィッド・アーモンド氏の講演会「想像から生まれる力―国際アンデルセン賞作家、デイヴィッド・アーモンド自身を語る」という講演会がありました。こんな機会は一生に一度かもしれないと、張り切って行ってきました。
初めて拝見したアーモンドさんは、とても気さくなあったかいオーラを放っておられる方でした。会場に気軽な感じで入ってこられて、とても熱心にいろんなお話をしてくださって・・・何だか、ますますファンになってしまいました。アーモンドさんは日本が大好きで、岩手にも行ってらしたとか。宮沢賢治の詩が好きで、とてもインスピレーションを感じられるそうです。賢治が方言を使って物語を書いているところに共感してらっしゃるようで・・講演の中でも、故郷の風景や子どもの頃のお話をいろいろしてくださいましたが、彼の言葉のひとつひとつが、そのまま作品世界を連想させるものでした。空が、土が、spiritが呼び掛けてくる・・という言葉が印象的でした。
作品が好きで読みこんでいる作家さんのお話を聞くと、当たり前かもしれませんが、共感できるところがとても多いです。「ありふれた(ordinary )」という言葉をよく私たちは使うけれども、この世界にありふれたものなど、何もないということ。存在の奇跡ということにからめて、ウイリアム・ブレイクの「THE TIGER」という詩を朗読しておられましたが、ブレイクの詩は、イギリスでもアーモンドさんの著書に影響されて読む人が多いとか。昨日レビューを書いた『ミナの物語』の主人公ミナは、(登場人物は誰でもそうだけれども)自分の一部だと。そして、「私が作品を書くのを助けてくれる部分」だともおっしゃっていました。ミナの世界に対する無垢な驚きの眼は、そのままアーモンドさんの心の眼なんですよね。・・・うん、納得。
ご自分の作品がどんな風に生まれるかという話も、創作ノートを公開してまで説明してくださって、とても興味深いものでした。子どもたちにも、同じように創作について説明されるそう。それは、本は遠いものに見えるが、皆さんにも近づきやすいものだということを伝えたいからとか。「あなたも出来ます」ということを伝えたいのだとおっしゃっていました。いやいや、それは難しいよ、と思いながら、そんなアーモンドさんの姿勢が素敵です。いろんな作品のお話もしてくださったのですが、その中でも印象的だったのを一つだけ。
『肩胛骨は翼のなごり』のスケリグ。「あの不可思議な存在を思いつかれたきっかけは何だったのですか」という質問(実はこれ、私でした)に、シュン、と降りてきたんだと。(シュン、という擬音とジェスチャー付きでした)一冊本を書き上げてポストに投函し、頭の中は空っぽで、やれやれ、ちょっと休憩しようと思って10mほど歩いたところで、いきなりあの物語を思い付いた。机に向かって書き始めたら、スケリグが、いきなり頭の中にやってきたらしいんです。「どこから来たのかわからないけど」とおっしゃってました。びっくりされたらしい(笑)あの物語は、書いている間、自分でもどうなるのかわからなかったと。あの作品をよく「巧みだ」と評されることが多いけれど、「その通りだよね」と笑ってらっしゃいました。『肩甲骨は翼のなごり』は、どうもとてもお気に入りのようです。5歳の頃に、氏の肩胛骨をお母様がさわって、「これはあなたが天使だったときの名残りよ」と言ってくれたと。そのことは忘れられないとおっしゃってました。あの物語には、そんな想い出も込められていたらしいのです。だからこそ、より特別な作品なのかもしれません。
既にイギリスでは出版されている著書を幾つか見せてくださったのですが、どれも涎が垂れるほど読みたいものばかり・・・どうか、日本でも出版されますように。これから書きたいものも、山のようにおありになるとか。嬉しいなあ。
「物語は楽観主義と希望から生まれる」「物語は崩壊に向かう力を押し戻すもの」「人間は物語を語るもの。人は人である以上、物語を語り続ける」
この言葉に、アーモンドさんの物語に対する信頼と愛情、物語を生みだすものとしての気概を強く感じました。参加できて幸せでした。アーモンドさん、ありがとうございました。そして、この機会を作って頂いた関係者の方々に、心からお礼を申し上げたいと思います。本にサインまでして頂きました~!幸せ・・・。
by ERI