「けいおん!」とか、「じょしらく」とか、タイトルが平仮名でキャラもきっちり萌えタイプ別に設定され、これでもか!というくらい可愛い女の子たちが出てくるという、ガールズもののアニメが人気です。うちにも二次元の女子しか愛せないヲタ男子がいるので(笑)私も一通りは見てます。(別に一緒に見なくてもいいんですけどね)そこに出てくるガールズたちは、見事に男子の妄想そのままの可愛さ。ま、現実にはおらんよね、という設定です。(まあ、あり得ない美少年BLものに萌え萌えだったりする女子と妄想度では同じ・爆)この作品も、ガールズたちの物語ですが、男子というよりは、女子が読んで楽しい学園もの。舞台は100%ガールズ、つまり女子校です。
主人公の真純は、宝塚命の母に男役になることを期待されて育った女の子。同級生に制服のスカート姿を見せたくないという理由だけで、遠くの横浜にある女子高に進学することにしたのです。初めて通う学校のしきたりや気風、初めて出逢うクラスメイト、先輩たち。新しい環境の中で、どんどん新しい目を開いて変わっていく女の子の気持ちが、鮮やかにテンポ良く描かれて、ほんとにあっという間に読んでしまいました。主人公の真純が良い子なんですよ。彼女は大切なことに自分で気づける子なんですよね。この「自分で気づく」って大事やな、と思うのです。
彼女は、男の子っぽくすることがカッコいいことだと、思っていたわけです。でも、先輩の人に対する優しい接し方や、自分が怖気づいて逃げたことに対して同級生が誠心誠意頑張る姿を見て、人のカッコよさというものが外見だけにあるわけじゃないと気づきます。
「カッコいいというのは、男とか女とか年齢とか関係ないんだ。きっと生き方の問題なんだ。」
何だか、胸のあたりがスカっとします。ほんと、そうだよね~、と真純と女子会したくなるわけですが(誰が女子やねん)誰に強要されたわけでもなく、こうして自分で獲得した価値観というのは、一生の宝物だよね、と思うんです。例えば、真純は、妹に「女子校ってネチネチしてるって、決まってるんだって」と聞いて、びくびくしていたのです。こういうもっともらしい伝聞情報って、ほんと山のようにあって、それこそネットを開けるだけでも洪水のように溢れてなだれ込んでくるし、口コミでも恐ろしい早さで伝わっていく。でも、そういう伝聞情報を頭に詰め込めば詰め込むほど、身動きがとれなくなったりします。だから、そういう伝聞情報を頭に詰め込むことを「仕入れる」というのかも。ただストックして次に流すだけで、自分の血肉にはならないんですよね。「知る」ということは、本当は人を解放するものであり、既成概念に風穴を開けること、心の自由を獲得すること。自分の人生を決めていく大切な羅針盤です。自分の心と体で、いろんなことを「知って」いく真純の毎日がフレッシュで、元少女(誰が少女やねん)の価値観にも酸素を入れてくれる感じです。この本はシリーズになるのかな。宝塚受験をめぐって、母と娘の攻防も生まれそうな予感。揉め揉めになるんかなあ、楽しみやなあ。(楽しみなんかい!)
2012年7月刊行 講談社
by ERI