リジーは、公園の「雲うり」から、小さな雲を買ってもらって「ミロ」と名付けます。リジーは、ミロを大切にお世話します。どこに行くにも一緒です。でも、ミロはだんだん大きくなって、リジーの手にはおえなくなってしまいます。大きくなりすぎた雲は、お部屋に閉じ込めていてはいけないのです。悲しいけれどお別れしなくてはなりません。
子どものときに持っていたもの。名前をつけて慈しんでいたもの。大人になっていくどこかで、別れのときがやってきたりするのだけれども、それは消えてしまうわけではなくて。いつもミロのように、眼差しのどこかに宿っているし、なぜか年をとればとるほど、色鮮やかによみがえってくるように思う。だから、この本自体が、懐かしい記憶のように思えて、何度も頁をめくって細かいところを眺める。カーテンの揺らめきも、雨上がりの空気の匂いも、子どものときのあこがれも、細部まで心のこもった絵のなかにやさしく閉じ込められているようで、うれしくなる。この季節に何度もめくりたい。