いのちあふれる海へ 海洋学者シルビア・アール クレア A・ニヴォラ おびかゆうこ訳 福音館書店

タイトルの通り、それはそれは色鮮やかな海の生き物たちが溢れる本です。有名な海洋学者であるシルビア・アールの伝記絵本なのですが、絵が本当に素晴らしくて、いつまでも見ていたくなります。シルビア・アールは、12歳のときに移り住んだフロリダの海の生き物に魅せられ、海洋学者になりました。この本は、シルビアが海で出会ってきた生き物の姿に焦点をあてて描き出しています。生きていることは、こんなに美しいんだと感じさせる絵です。だからこそ、シルビア・アールの海に対する愛情が溢れるように伝わってくるのです。海の大切さ、そこに生きる命の美しさを目で体感することで、読み手がその愛情を共に感じることが出来る。どんな理屈よりも、心に訴える本の作り方だと思います。

いやもう、何度も言いますが、絵の力が半端ないのです。クジラが縦横無尽に泳ぎ回る絵だけでも、いつまでも見ていられそうなほど見事なんですよ。クジラというと、大きく悠々と泳ぎまわるイメージしかなかったんですが。こんな風にお茶目に泳ぎまわる生き物だったんですね。そして、海底に輝く星のような命のきらめき。エンゼル・フイッシュと一緒に泳ぐシルビアの眼差しの優しいこと。この本には、たくさんの美しいものがいっぱいに詰まっています。それだけに、後書きで作者のクレアさんが書いておられる海に対する環境破壊のあれこれが胸に刺さります。私たちの命は、多様性を基本にしたありとあらゆる存在に支えられているはず。しかし、どうも私たち人間は、競争や成長と称して、その多様性を潰していくほうに走っているような気がしてなりません。「地球の青い心臓」は、次世代の子どもたちのもの。原発の問題も含めて、未来にツケを残さないのが良識ある大人の取る態度だと思うのですが・・・。子どもにも、そしてたくさんの大人の人たちにも読んで欲しい本だと思います。

2013年4月刊行

福音館書店

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